空にあがる灰色の煙はお前。空まで着けば、そこに浮かぶたくさんの雲の一つに、きっとお前はなるのだろう。
…なんて柄でもない感傷的な事を考えながら、バチバチと音を立て燃え続ける棺と木を眺める。
青い空とは真逆に火はどこまでも赤く近く、それがまた鼻の奥を熱くさせた。
「……ごめんな。私のせいで、ごめん」
もう何度となく呟いた言葉。
独り言。
「だけどな、私はやめない。盗賊で居る。盗賊以外の自分は想像できんよ。お前から命を奪ったのは盗賊の私で、…もっと何か奪わんと、……何と言えば、いいのかな」
私はあまり喋るのが得意じゃないんだ。
棺への言葉をそう締め括り、自嘲する。得意じゃないとかほざいておいて、こんなに独り言ばかり饒舌な奴になってやがる、と。
独り言。
もう何を喋っても――独り言。
「――お前が生きている時に、もっと話しておけば良かった、っ…!」
今更泣いてどうなる。馬鹿か。死んだらもう終わりじゃないか。耳を見ろ。
燃えている。
聞く耳はない、自分が燃やしているのだから。
「…間違っている」
座り込み膝に額をあて、泣いて乱れた呼吸のまま、独り言を更に続ける。
「っまえは、死んじゃいけな…っ!何でお前が、」

目覚めたら知らない部屋で、
(で、この子は――貴方のせいで死んだんでしたっけ?せめて燃してあげたら如何です、腐乱してますよ)
知らない部屋で放置されて、
(――私が、)
腐った傷口でもどんどん治って、
(貴方のが詳しいでしょう、私は現場に居ませんでしたし。というより、私だってその時死に掛けだったんです)
何もしてくれなかった拾い主に適当に感謝を述べて去る直前に、
(死んだ、の、…は、 違う 私が殺したのか、…)
晒されたのは、お前の死体。
(知りませんて。ただ、まぁ、一つだけ完全に判るのは、)
(あなたのおともだちは、ただのしたいになったってことですよね)

頭を掻き毟ったところで痛いだけで、夢なら覚めろと壁に頭をぶつけたところで痛いだけで、泣いたところで痛いだけで。
腐ったかつての親友は、自分より蛆虫と仲が良いときた。いっそ笑いたい状況だったのに笑えなくて、ただただ泣いた。
さぞや見っとも無い顔だったに違いない。骨に申し訳程度に肉がついた顔に微笑みかけても、それが上手く笑えていたかどうか。
(なぁ、私は、上手く笑えているか?)
(                )
(…笑えてないんだろうな――)
(             )

すぐさま棺を買って親友を入れ火へと放り込み、今に至る。
「――こっちのが笑えるよな。生きる為に二人で盗った金を、死んだお前の為に使ったんだ。…なぁ?笑えるだろ?」
何度も泣いたせいか、もうそんなに泣けない。薄情なものだと自分で思う。
赤く腫れた目元を緩め、立ちあがった―― その時、

バン!!!

「っ!?」
棺が――開いた。
瞬時に理解した。棺の中の空気が暖められ、圧縮された空気がどうとか、爆発のようなものが…そんな感じなんだろうな、と。
よくは解らないが穴をあけておけばよかったのかもしれないな、そう考えたのも一瞬で、次にはもうそんな事は考えられない。
「ーーーーーーっ、!!!!」(バチ、 バチン バチッ!)
死体が、起き上がった。
親友の上半身が、起き上がった。
これもきっと似たような事が原因で、勿論生きた人間を燃やしたとかそんな訳では な く 、いや、こんな事はどうでもいい。
「あ、うあっ…」
嗚呼、嗚呼、嗚呼!!!
お前はまだ生きたかったのか!
息をして心臓を動かして脳を働かせ瞬きをして食事をして笑って泣いて悲しんで喜んで疑って信じて生きて生きて生きて生きて生きて生きて生きて生きる。
そんな人間のような事が、したかったのか。
私にできてお前にできない事が、したいんだろう?
「くそ、が……ぁ、あ」
身体を起こした親友と反対に、彼は崩れ落ちた。
また泣く。漸く笑えるようになったのに。嘘でも不細工でも笑えるようになったのに。
「バカ。泣いて何になるんだよ」(バチバチ チッ)
「そんなに泣いてばっかな奴嫌いだ」(バンッ、バチバチバチ、バン!)
「もう泣」(ゴォォオオオオ――)
「あ、 あ、ああ……!」
崩れ落ちるその瞬間まで、焼けた死体は手を伸ばしていた。
何かに向かって。
私に向かって。

けれどその手をとる資格なんて自分に有りはしない。
資格云々を考えて友達の手すらとれない自分が酷く落ちぶれて感じられ、また崩れ落ちた親友の姿が自分を拒絶したように感じられ、切ない。
黒い手は掴めない。
この手は掴まない。

火はこんなにも近く感じるのに火はこんなにも熱く感じるのに火はこんなにも肌で感じられるのに、
その中の死体は、少しずつ、崩れていって、原型が、もう、無い、なんて。

「あああああああああぁぁぁぁぁああああああああああああぁぁぁっっっ!!!!!」

喉が潰れるくらいの声で、胸糞悪いくらい蒼く遠い空に向かって大きな声で何度も何度も何度も叫んだ。

「           」(              )

――聞く者は居ない



****



「…、何だ?」
起きたら泣いていた。
泣くというには少量すぎる涙だが、それが顔を伝い耳に入ってきていて、非常に気持ち悪い。
(…夢?は、見ないから…水をかけられた?いや此処外だぞ…誰がやるんだ)
縷々として紡がれる思考の糸は解答という穴にを通らず、ただただ長くなってゆくばかり。
「…まいっか」
考えたところでどうにかなるものではないのだろう、ならば、考えなければいい。
意識の覚醒レベルをあげる為に背伸びをする。もう大分頭を使ったし必要がない気がしないでもないが、それでも、背を伸ばすのは単純に気持ちが良い。
腕を上げたまま空を見上げると、瞼が上がりきらない目には鋭すぎる陽光が突き刺さった。
(晴天、か…)
雲がない空を見ると少し寂しい。
お天道様に見られても、それに誇るような事をしていない自覚が有る故の背徳感だと思う。
雲はそれを隠してくれる。太陽から見られる事も、自分が太陽を見る事も、どちらもしなくてよくなる。素晴らしい逃げ道を用意してくれる素晴らしいもの。
なら盗賊なんて辞めるか、そう何度考えたか知れない。けれど辞められない。
今辞めたところで仕事を見つけ生計を立てる自信がない、というのが一番の大きな理由だが――それ以外、何か理由が有る。
仲間が惜しいだの恋しいだのそういったものかと思ったが、そんな感情が自分に有るのならば是非指摘してほしいと思うくらいだから、これはない。
人を恋しいと思った記憶が無い。過去に経験としてあるのかもしれないが、その記憶がないのだから、照らし合わせようがない。
だから何か他に有る。もう思い出せない理由が、何か。

「――あ。あった」
泣いた理由などどうでもよくなり、そちらに思考を馳せているときに――見つけた。
太陽を隠そうとする雲が出てきている。雨雲だろうか、うっすら黒い。つまり、灰色。
(アジトに行く気は無いし…適当に、今日は過ごすか)
太陽を隠す雲も、胸の中に在る理由を隠す雲も、暫く消えそうにない。

雲は、ただ、そこに在る。



******



ナイズの設定が大分決まったかなー?過去設定ブームに乗じてコソーリ笑 携帯でカチカチとやったもんをPCで完成…暇だったし…シブにあげんのはダリィ
PCで打つと制限ない分やっぱ少し長くなっちゃって読みにくいですね´・ω・基本携帯で2000バイト〜6000バイトくらいですんで…これ6000バイト超えてんじゃねぇのかなぁ
やっぱり長いと飽きるんで大分適当ですけど、ね…!あーでも久々にPCで打って楽しかったです´∀`
ただかなり↑臭いのでやっぱり消える候補な設定ですけど。ありきたりだしな〜… あと情に厚いナイズいくら若い時でもキモくねぇか…

ナイズはもうこれ忘れてるけど。この時の気持ちだけは憶えてて、何となく雲が好き。そのうち雲に話し掛けだすぜ…w
夢みるんですよね一応。でも普通の人でも全部の夢を憶えている訳ではないらしい、「こんな夢見たんで」と話すんだって一部とか?詳しくねぇんだけど
人は忘れてるけど罪悪感は消えない。何が在ったのかはどうでもえぇんで一々書きませんが、友達が死んだのね!くらいに考えて頂ければ
忘れてんだから薄情だよ。思い出したら思い出したで、まぁ多分どうにも何にもなんないでしょうけれども。こいつ自殺あたりで死にそう…笑
…自キャラの自殺率の高さに全俺が引いた。ロキは殺される日を待ってるけど、悪人に殺されたがってるから…うん自分も悪人だし自殺でいい
決まっちゃった――!(*´ω`)最後のセクションあたりでサクっと殺せたらいいな、死亡フラグなんてないぜ!
まぁどうせ面倒がって普通に企画終了すると思いますけどね← 殺すのて結構難しい

死んだ奴に関しての設定はまるで決まってないんで、途中名前叫ばせたくても無理だったというアレですが決めてみてもいいかもしれないw出し損ねた鳥人キャラとか、ね――!女性でもいいかもなぁ男女二人で組んでんのに一切恋愛感情入ってなかったってのも面白いと思うんですはいはい俺得俺得!いいよね、プラトニックもどき!

企画がもうすぐ終わるからかものっそ盗が更新したい気分みたいです笑