泣いたと思う。
彼を殺して、私は泣いた。
恐らく、今までの我なら泣くどころか、人の顔を剥ぐという行為がいかに残酷な所業であるかすら理解できなかった。
これは、彼からの贈り物。
彼からの罰。
「×××――っ、×××、×××………!!」
悲しめと、苦しめと、悩め叫べ恐れろと。
私が、言っている。
「ふっ…ぅぐ……ひっ……」
しゃくり上げ、一人泣いた。途中で苦しくなりえずいたりもした。
誰も居ない。
後ろからの香る血のにおいがさらに私を苛むのに、逃げることすらできない。
「×××……っ!」
愚かな我が、思っている。
もしかしたら、本当にもしかしたら。
優しい彼は、我の泣き声を聞いて、慰めにきてくれやしないかと。
賢い私が、言っている。
彼を殺したのは私だろうと。
彼はあそこで伏している、おぬしのことなど眼に入らぬと。
私が正しいのは、当たり前。
私は彼だから。彼はいつでも正しかったから。
まともな感情を、有難う。
おかげでとても悲しんでいる。
おかげでとても苦しんでいる。
おかげでとても悩んでいる。
おかげでとても叫んでいる。
おかげでとても恐れている。
一生こんな気持ちと付き合わねばならぬ私を、
貴方なら、案じてくれるはずだよな?
そう信じきっている我を、憐れだと笑ってくれればいい。
嘲笑ってくれてもいいから、生きていてほしかった。
それが、情け無い本音。